『何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない』、わずか20文字の短い文章ですが、廃棄物処理法の中でも最も重い罰則の対象となる「不法投棄」を禁じた条文です。(第16条)
わが国では、過去に、大きな不法投棄事件が何度も起きていますが、その中でもⅰ)青森・岩手県境不法投棄事件、ⅱ)香川県豊島不法投棄事件は、その規模や著しい環境汚染から、大きな社会問題となりました。
 いずれも、昭和から平成にかけて、大量の廃棄物が不法に持ち込まれ山野に投棄されたもので、その量は90~100数十万トンに達するとされています。
 特に青森・岩手県境不法投棄事件は、投棄された廃棄物の大半が首都圏から排出されており、都内でも多くの排出事業者が、事業者責任が全うされていないとして、青森、岩手両県からの原状回復命令(措置命令)の対象となりました。
 また、不法投棄というと、廃棄物処理業者が山林や原野に大規模に廃棄物を投棄する行為を想像しがちですが、実際には、少量でもまた一般住民でもその対象となります。
 過去には、ほんの数㎏のごみを公共駐車場に放置したとして一般の主婦が不法投棄で検挙されて例もあります。
 さらに、警察庁の資料によれば、令和4年の環境事犯の検挙数6,111件のうち廃棄物処理法違反が5,275件(86%)、そのうち不法投棄は2,784件(46%)を占めており、廃棄物処理法違反とりわけ不法投棄事案が大きな割合となっています。
 これは、投棄された廃棄物が希釈や消滅することなく長期間残り発見されやすいことに加えて、廃棄物処理に対する社会の関心の高さが一因と考えられます。