硫酸ピッチとは、不正軽油(軽油引取税を脱税する目的で、軽油にA重油や灯油を混ぜて販売・使用される燃料油)を製造する際に、副生成物として発生する廃硫酸と廃油との混合物を言います。
 不正軽油の密造は、暴力団の資金源になるなどで、特に平成10年代に全国的に増加し、そこから発生ずる硫酸ピッチの不法投棄等が大きな社会問題となりました。
 硫酸ピッチは、強酸性で強い腐食性があり、不法投棄されるとドラム缶等から漏れ出して水系を汚染し、有毒ガスを発生するなど、生活環境に著しい被害を及ぼします。
 平成15年には、不法投棄や不適正保管された硫酸ピッチが、ドラム缶で3万本近くに上り、生活環境の保全のため行政による代執行(撤去)も全国で年間20件以上行われました。
 硫酸ピッチは、その性状から、廃棄物処理法上の特別管理廃棄物として規制されていましたが、不適正処理された場合に生活環境への影響が極めて重大なことから、さらに強い新たな規制措置が求められました。
 このような状況のもと、平成16年に、廃棄物処理法に新たな条文(第16条の3)が追加され、硫酸ピッチを「指定有害廃棄物」として、より厳しい処理基準や保管基準が設定され現在に至っています。
 また、併せて地方税法が改正され、不正軽油製造に対する罰則が強化(懲役10年以下、罰金1,000万円以下、法人重科は3億円以下)されました。
 このような規制の強化が功を奏したのか、平成15年をピークに硫酸ピッチの不適正処理量は大きく減少しています。