セメントは建築物や道路等を作る際に大量に使われている資材ですが、現在では、その原料の一部に廃棄物が使われているのをご存じでしょうか。

セメントは、石灰石、粘土、ケイ石等の天然原料を1400度以上の高温で焼成して作られますが、このとき、天然原料の代替えとして、汚泥、スラッジ、高炉スラグ、石炭灰等の無機性の廃棄物が多く利用されています。

また、木くず、廃プラスチック、廃タイヤ等の可燃性の廃棄物が、重油に代わる熱エネルギー源として利用されています。

2020年度には、セメントを1t製造するのに、半分近い468㎏の廃棄物が使われており、全国では年間約2600万トンの廃棄物が再利用されています。

セメントは、使用用途に応じて種類が分類されており、その品質はJISで細かく規定されています。

このため、セメントの製造にあたっては、原料の組成割合や焼成温度等の操業条件を細かくコントロールする必要があり、利用する廃棄物についても組成や発熱量をもとに配合等が調整されています。

多量の廃棄物を使用できるようになったのは、排ガス処理設備等の強化に加えて、業界の長年の技術の蓄積や経験の積み重ねによるところが大きいと言えます。

このように、廃棄物の再利用を通して循環型社会の形成に貢献しているセメント業界ですが、一方で、セメント会社にとっても、使用する廃棄物の多くは処理費用を受け取っていることから、製造コストの低減につながり、現在では大きな収入源となっています。