国の責任を認めた最高裁判所の判決を機に、石綿(アスベスト)の健康被害が改めて大きな社会問題となっています。

石綿は非常に細い天然繊維で、大気中に飛散すると呼吸を通して体内に取り込まれ、肺がんや中皮腫等の原因となるとして、今では製造や使用は禁止されています。

しかし、熱や摩擦に強く安価な素材のため、建材や保温材等としてすでに大量に使用されており、その量はわが国全体では1,000万㌧に達すると推計されています。

このため、現在、建物の解体などに伴って、石綿を含む廃棄物(石綿廃棄物)が多く排出されており、その適正処理が大きな課題となっています。

石綿廃棄物は、その飛散性により二種類に大別され、取り扱い方法も異なります。

保温材や防音材として建物内壁や空調パイプ等に吹き付けられた石綿は、飛散性が非常に高いため、その撤去工事は大気汚染防止法の規制を受けています。

さらに、工事から発生する石綿廃棄物は特別管理産業廃棄物である「廃石綿等」と分類され、高温で熱処理して無害化するほか、厳重な飛散防止措置を取った上で埋め立て処分するなど、処理方法は厳しく規制されています。

一方、材料の一部に石綿が使われているスレート材やPタイルなどは、飛散性は比較的小さいことから、「石綿含有廃棄物」として普通の産業廃棄物として処理できます。

ただし、処理の過程で破砕することは禁止されており、さらに、契約書やマニフェストには、「石綿含有廃棄物」を含むことの記載が求められるなど、取り扱いには特段の注意が必要です。