わが国の紙の消費量は年間約2,300万トンに上っています。

一方で、古紙の回収率は80%を超え、また、製紙の原料に占める古紙の割合(古紙利用率)も70%近くに達するなど、世界有数の紙のリサイクル国となっています。

これは、わが国が、優れたリサイクル技術のもとで、品質の高い古紙(製紙原料)の分別、回収体制を築いてきた結果といえます。

実は紙のリサイクルの歴史は古く、1000年も前の平安時代から始まるとされています。

当時は、紙を多く使用するのは、朝廷や貴族などに限られていましたが、使用済みの紙は「古紙の抄き返し」としてリサイクルされていました。

これは「こうぞ」や「みつまた」などの長繊維の植物を原料とする「和紙」の特性に負うところが大きいと思われますが、この時代に紙のリサイクルを行っているのは、世界的にも極めてまれな例と言われています。

当時は、紙に付着する墨を抜く技術が未熟で、抄き返した紙は、薄く墨の色が残っており、「薄墨紙(うすずみがみ)」と呼ばれていました。

再生された紙は、有職故実(*)に基づき、朝廷の公文書として使用することとされ、たとえ天皇の文書といえども略式の命令などでは、新品の紙は利用できず、再生紙である薄墨紙を用いていたようです。

現在でも、官公庁等で使用する事務用紙は、「グリーン購入法」により再生紙を使うこととされており、平安時代の有職故実の例に当てはめると面白いですね。

(*)(ゆうそくこじつ)朝廷や公家、武家の制度や行事、習慣等に関する定め。